札幌学生対校演劇祭

2021年10月10日
 2022年3月でサンピアザ劇場が休館する。これは対校祭にとって非常に大きな出来事だ。

 サンピアザ劇場とは、北海道札幌市厚別区に所在する劇場である。複合商業施設の中に入っているので、食事や急な買い出しにも便利だ。対校祭もとい札幌学生対校演劇祭は、2010年に始まってからの11年間ずっと、この学生演劇祭にとって最適解ともいえる劇場で開催しつづけていた。劇場利用にかかる費用は格安、本来であれば手が届かないプロのスタッフさんと仕込みができ、事前に提出したプレスリリースが商業施設内で掲示され、本番当日はロイズのチョコレートを差し入れとしていただいている。要するに、至れり尽くせりなのだ。そんな素敵な劇場が、今年度を最後にしばらく使えなくなってしまう。やはり、時節柄の影響を受けてなのだろうか、詳しいことは現時点ではまだわかっていない。とはいえ、思い返せばここ約2年、常に真綿で首を絞められているような状態で、少しずつ締める手と手がきつくなっていって、ぱたぱたと様々な人や場が限界をむかえている。

突如出現した新型ウイルスをきっかけに、わたしたちの生活は大きく変動した。いや、現在進行形で変動しつづけているのかもしれない。2020年度は衝撃の連続で、打ちのめされることが多かった。昨年度の札幌学生対校演劇祭は感染症がらみのイレギュラーな事態が重なり、第6回全国学生演劇祭はオンライン開催に切り替わった。中止にならなかっただけまだマシと言い聞かせるのも空しい。自分にとっては大切なもので生活の一部だとしても、複数人で密集し、比較的狭い空間でマスクをせず発声し、人との距離は近いことが殆ど、不要不急だと真っ先に切り捨てられた。そう認めたくはなかったけれど、認めざるを得なかった。結局、演劇は娯楽の域を出ないものだからだ。しかし、娯楽がないと人は元気になることができない。演劇のために元気になるのではなく、元気になるために演劇をしたい。

 対校祭の参加者の殆どは4年制大学に通う20歳前後の学生なのだが、今の大学1~2年生は学生同士の対面が数えるほどしか無く、新たな人間関係を築くことが困難な高校4~5年生状態になっていると聞く。なんて悲しい響きなのだろうか。また、新しいことをひとつ始めるにも容易ではなくなったように見える。特に、大学ではだだっ広い輪の中で様々な人間と出会うことができ、その中でちょっとしたきっかけで化学反応が起こることは少なくない。しかし、災禍がここまで長期化すると、そういったきっかけやエネルギーを根こそぎもっていかれている。悔しい。だから、抗いたい。それこそ対校祭に関わってくれている学生たちには「対校祭に参加してよかった」と思ってもらいたい、この気持ちが以前よりも大きくなった。

 対校祭まで残すところあと1ヶ月半程度、若い世代のワクチン接種も進み、昨年度の教訓も経て万全の状態で開催に臨むことができる。わたしたちを取り巻く暗澹たる景色が、夜明け前の暗さであると願わずにはいられない。


文責:エノモトナルミ

北海道札幌市在住。会社員。2014年から札幌学生対校演劇祭に参加、2016年頃から本格的に運営に携わる。第4~5回全国学生演劇祭実行委員会・広報部、第6回全国学生演劇祭実行委員長。

2021 全国学生演劇祭 
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